間があいてしまいましたが更新です。
相変わらず「文章」で黒い作品です。昨年の7月頃?
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大好きな彼女のなかで一番嫌いなのは、優しいところだった。
優しかった彼女。
落ち込んでいれば慰めてくれるし、悲しんでいるときは傍にいてくれた。
彼女の手が、好きだった。
寒かったあの冬の日、冷たいね、と笑って僕の手を握り返してくれた、あたたかい手。
あのやわらかなぬくもりは、未だにはっきり思い出せる。
彼女の手は、僕を幸せにしてくれる魔法の手だった。
だけど彼女は、優しかったから。
みんなを愛していた。
誰に対しても、優しく接する彼女。
その姿を見るのが嫌だった。
僕以外に、あのあたたかさをわけているのが嫌だった。
僕以外の誰かと話しているのが、
僕以外の誰かに優しくしているのが、
僕以外の誰かと笑っているのが、
僕以外の誰かにあの手で触れているのが嫌だった。
赤い緋い、ずたずたの手。
切り落とされた、彼女の手首。
血塗れの肉切り包丁の傍らに、血塗れで横たわる彼女。
ぬるりと赤く染まった手を、自分の頬に当ててみる。
―――冷たかった。
僕の好きだった、あのやわらかいぬくもりは失くなっていた。
でも、僕はそれでよかった。
もう、僕以外の誰にも、彼女の手を触れさせないですむから。
彼女だって、きっとゆるしてくれるだろう。
だって彼女は、優しいから。
久々にこんくらい黒い作品書きたいですね。