たぶんこの夢は、もうすぐさめてしまうのだろう。
覚。
甘ったるい夢の終わった脱力感と、悪夢から解放された安堵感。
霧が晴れて、世界がはっきりと見える。
其処に在ったはずの、いつしか消えていた障害物。
鬱陶しがっていたそれは、君への感情。
冷。
君の瞳を見ても、僕の胸は高鳴りをしなくなった。
君が温めてくれた僕の手も、その温度を失っている。
僕の身体と心は、どうやら冷たくなってしまったようだ。
君を愛せなくなってから。
褪。
あの想い出達は、鮮やかな色をしていた気がする。
でも今は、その彩りが思い出せない。
廻る走馬灯は、セピア色。
醒。
だいたい、これが本来在るべき姿だったのかもしれない。
平気で誰かを傷つけるような人間は、愛さない方がよかったのだ。
エコーする後悔。
消えていく感情。
終わっていく夢。
でも、消えるというのは、其処に事柄が存在したから成せること。
終わるということは、其処には始まりが在ったということ。
霧の晴れた世界に存在した真実。
僕が、君を愛したということ。